その背景には、多様化するワークスタイル・ライフスタイルの変化を捉えた柔軟な発想と、
次代を担うメンバーの新鮮な視点を活かした開発思想があります。
今回の座談会では、そんな"新たなアセットに挑む"開発のリアルと、現場で感じた手応え、
そしてこれからの都市空間のあり方について語ってもらいました。
税所
:
ワーキングフォートとアドレアは、いずれも都市型アセットを購入して開発するプロジェクトです。まずマンション用地なのか、オフィス用地なのか、周辺のマーケットを見極めたうえで建物を企画・建設し、完成後にテナントや住居者の方に入っていただきます。そして不動産として安定稼働したタイミングで売却し、また次の土地を探していく――そういったビジネスモデルを採っています。
下谷
:
ワーキングフォートのような都市型コンパクトオフィスと、アドレアのような都市型レジデンスのプロジェクトは、ちょうど2021年の秋ごろにほぼ同時にスタートしました。
渡辺
:
どのような経緯で、コンパクトオフィスや都市型レジデンスへの挑戦が始まったんですか?
下谷
:
三井物産都市開発では、これまで回転型の不動産ビジネスにおいて、物流施設=ロジスティクス分野で大きな成果を上げてきました。その経験やノウハウを、同様の事業スキームで他のアセットタイプに転用できないか
、そんな発想が出発点でした。
ちょうどその頃、コロナ禍で一時低下していたオフィス需要が徐々に戻り始めていて、人の流入も都心部では回復傾向にありました。そうした背景もあって、都内でのオフィスやマンションは、ビジネス的にも安定したアセットだと判断できたのも大きかったです。
渡辺
:
税所さんは、僕たち推進部に案件が下りる前の役割を担当していますよね?
税所
:
そうですね。僕は主に都市型アセット用地取得を担当していて、売主や仲介会社に「こういう土地を探しています」と要件をお伝えし、紹介していただいた情報を社内に持ち帰って検討する、というのが最初のステップです。
検討の際には、その土地がどんな用途に向いているか、着工した場合の総工事費なども含めてシミュレーションします。そこで会社として「GO」の判断が出れば、売主の方と交渉を進めて契約に進みます。
無事に取得が決まったら、そこからは下谷さんや酒井さん、渡辺さんら推進部のメンバーにバトンが渡り、竣工に向けてプロジェクトを進めていく、という流れです。
酒井
:
やっぱり、用地の取得って簡単な仕事ではないですよね?
税所
:
そうですね。都心の人気エリアの土地は、当然ながら他のディベロッパーも狙ってきますし、競合に勝つためにはスピード感のある情報収集や、地権者さんとの信頼関係の構築も欠かせません。それに市場のニーズを見極めて、「この土地には何を建てるのがベストか」を判断する目利きも必要です。大変ですが、その分やりがいも大きいですね。
下谷
:
酒井さんは、入社して間もない頃に賃貸レジデンスブランドの新規立ち上げに関わりましたよね?
酒井
:
はい。私は「アドレア」という賃貸レジデンスブランドの立ち上げに携わりました。これは当社としては3案件目の賃貸レジデンス開発だったのですが、「アドレス(所在地)」「デザイン」「アイデア」という3つの意味を込めたブランド名の検討から、ゴールドを基調にして、高級感のある印象にしたロゴ、コンセプト設計まで、どうブランドをつくり上げていくかという根幹に関わることができました。
税所
:
まさに"会社の顔"となる新ブランドの立ち上げですね。
酒井
:
そうですね。三井物産都市開発ではこれまでロジスティクス領域が中心だったので、まさか自分がレジデンスブランドの立ち上げに関われるとは思っていませんでした。社内で「これから賃貸レジデンスもやっていく」と話が出たときから、「ぜひ携わりたい」と思っていて、実際に形にできたのはすごく嬉しかったです。
税所
:
下谷さんが担当したコンパクトオフィスとしての顔「ワーキングフォート」というブランド名も印象的ですよね。由来はどういったものなんですか?
下谷
:
「ワーキングフォート」は、日比谷フォートタワーに代表されるように、当社のプロジェクトでよく使われる"フォート(Fort)"という言葉をベースにしています。意味としては「砦(とりで)」で、三井物産都市開発が提供する不動産に、安心感や重厚感、土台としての存在感を持たせたいという想いを込めています。
税所
:
渡辺さんは、「ワーキングフォート」「アドレア」の両方に関わっていますよね?
渡辺
:
そうですね。私は、コンパクトオフィスと賃貸レジデンスの両方の案件に携わっていて、「どういう建物をつくるか」といった企画段階から、プラン設計、スケジュール管理、コストコントロールまで、竣工に至るまでのマネジメントを担当しています。
下谷
:
具体的に、どんなところに難しさを感じていますか?
渡辺
:
やはりマネジメントの面では、工事費が読めないことが一番難しいですね。物価や人件費の上昇、社会情勢の変動など、不確定要素が多いので、設計段階でも、着工中でも、常に何かしら問題が起きてきます。最後の竣工まで、気が抜けません。
それに、ゼネコンや設計事務所など、関係者の立場によって意見もさまざまなので、プロジェクトの中心に立つ立場として、最終的には判断を下さないといけない。年次に関係なく、事業者としての意思決定を求められる場面も多く、そこが若手としては大変ながらチャレンジングな部分ですね。
下谷
:
悩んだり困ったりしたときって、どうしてます?
渡辺
:
酒井さんは同期なんですが、昨年から同じ部署になって、それぞれ違う案件を担当しているものの、事業の進捗フェーズごとに情報共有したり、相談し合えたりする関係があるのはすごくありがたいです。近くに信頼できる仲間がいるのは、心強いですね。
酒井
:
そうですね。どうしても一人では解決できないことも出てくるので、経験豊富な先輩やほかの事業を担当している同期にすぐに聞ける環境や、社内の技術部門に相談しやすい雰囲気があるのは、三井物産都市開発で働く上での大きな魅力だと思います。
税所
:
僕もそれはすごく感じています。たとえば用地取得の場面でも、推進部や現場のリアルな声が判断のカギになることが多いんですよね。
僕はキャリア採用なのですが、三井物産都市開発では、新しく仲間が加わるたびに、オフィスの共用スペースで部署を問わず自由参加・自由退場の歓迎会が開かれるんです。そういうオープンな交流の場があるからこそ、横の関係が自然と生まれて、仕事の連携もしやすくなる。結果的に、チームとしてのパフォーマンスも高まっている実感があります。
下谷
:
私も、ベテランか若手かに関係なく、それぞれの意見を尊重しながら進める姿勢はとても大事だと感じています。コンパクトオフィスや賃貸レジデンスのような新しい取り組みは、会社としてもまだ挑戦段階なので、過去の成功体験だけではカバーしきれない部分もあります。だからこそ、都度アイデアを出し合い、議論を重ねながら、価値をつくっていく必要があると思っています。
渡辺
:
新しい案件に飛び込むのって、やっぱり大変なことも多いですね。酒井さんも、慣れない仕事に「どうしよう!」ってなったことあったんじゃない?
酒井
:
そうですね。初めて賃貸レジデンスの開発に携わったときは、デザインに力を入れたことが一つの挑戦でした。ロジスティクスの施設では、そこまでデザインを追求する機会はなかったので、デザイン会社さんの提案をいろいろ取り込んでいたら、最終的に予算に全く合わなかったということもありました(笑)。
コストを抑えながらも高級感のあるデザインを実現するという、そのバランスをどう取るかが一番の難しさでしたね。
渡辺
:
確かに、僕たちが手がける建物は"作品"としてだけではなく、お客さまが使って初めて価値が生まれるものですから、実用性との両立は常に意識しています。
税所
:
アイデアや感性って、普段の生活の中でも磨かれるものなんですか?
酒井
:
そうですね。今プロデュースしている物件では木目調のナチュラルなデザインを重視しているので、街中を歩いていても、つい同じようなデザインに目がいきます。「この素材感、いいな」とか、「このバランス、使えそうだな」とか、何気ない風景の中から学べることが多いです。
渡辺
:
設計段階では、どうしても"人が見えにくい"部分が多いですよね。だからこそ、竣工した物件に実際に足を運び、お客さまがどのように使っているのかを自分の目で見ることは、本当に勉強になります。
三井物産都市開発は若手の意見も柔軟に吸い上げてくれる環境なので、自分で見たことをきちんと咀嚼して、なぜそう思うのかを言語化しながら意見を伝える必要があります。ひとつひとつの判断が建物に反映されていくという、緊張感とやりがいを感じながら、日々の経験が自然と次の開発にもつながっている実感とともに仕事に取り組むようになりました。
税所
:
私たちには、不動産ブランドを作りたいという思いの先に、街へとその価値を還元する使命がありますよね。
下谷
:
そうですね。ワーキングフォートの開発で蓄積されたノウハウも、活かしてこそ意味があると感じています。新しいアセットへの展開や次のプロジェクトに反映していくことが、会社としての価値になりますし、同じことを繰り返すのではなく、市場や社会のニーズに応じて常に新しい挑戦をしていこうという空気を社内からも感じます。
税所
:
どんな価値が今求められているのか、用地取得に関わる身としても常にアンテナを張って考え続ける必要があります。たとえば、行政が重要視しているスタートアップ企業が働きやすい環境づくりだとか、オフィスのハード面のサポート一つとっても付加価値の形は多様であり、たくさんの可能性を秘めています。
もちろん、社会情勢の影響も受けやすくて難しさはありますが、それでもアップデートを重ねながら価値を追求していくという点では、非常にやりがいのある領域ですね。
下谷
:
結局、ディベロッパーの本質は「価値を創造すること」だと思います。自分たちが手がけた建物が、入居者の方にとって心地よく、元の地権者さんにとっても「やってよかった」と思ってもらえる。土地の価値そのものを高めていくことができるのは、この仕事の大きな醍醐味ですね。
税所
:
そうですね。価値という観点で言えば、これまでの実績に加えて、今後は建物の価値を再生させるバリューアップホテルなど、さらに多様なアセットにも挑戦していきたいと思っています。社会の変化に合わせて、求められる空間も変わっていく----だからこそ、私たちの役割も進化が必要だと感じています。
下谷
:
まさにその通りですね。ディベロッパーの仕事は、ただ建物をつくるだけではなくて、そうした変化に対応しながら、社会課題の解決にもつながるものです。「世の中にどう貢献できるか」という視点を忘れずにプロジェクトに向き合えるからこそ、開発の仕事って本当に面白いと思います。